【水害・冠水復旧事例】台風で水没した大型水力発電設備(発電機3基)を精密除染・洗浄で完全再稼働へ|年単位の設備交換を回避し早期復旧を実現
1. 復旧プロジェクト概要
2025年9月下旬、大型台風の直撃に伴う豪雨および河川の氾濫により、ラオス国内の大規模水力発電所が甚大な冠水被害に見舞われました。建屋の複数フロアが水没し、国家および近隣諸国への電力供給を担う基幹設備である大型発電機3基が完全に水没。一時は年単位の操業停止と莫大な設備交換費用が懸念されました。
リカバリープロ/BELFORは発災直後から現地入りし、独自の精密洗浄・除染・除湿乾燥技術と包括的な絶縁性能試験を実施。設備を買い換えることなく、43週間の現地プロジェクトを通じて3基すべての発電ユニットを性能100%回復で完全再稼働させました。
【復旧プロジェクト概要】
| 項目 | 詳細・実績データ |
| 対象施設 | 大規模水力発電所(ラオス国内および近隣諸国へ電力を供給する基幹インフラ) |
| 被災原因 | 大型台風直撃に伴う豪雨・河川氾濫による建屋冠水 |
| 被害対象設備 | 大型発電機 3基(ローター/回転子、ステーター/固定子)、隔離相母線(IPB/バスダクト)、高低圧受配電ケーブル類、電気・電子制御機器、発電室建屋・基礎ピット |
| 主な被害状況 | 淡水冠水、微細シルト(沈泥・土砂)・有機物・油分の内部侵入、絶縁部吸湿、金属腐食リスク |
| 採用工法・技術 | 磁極分解点検、専用洗浄剤による脱脂・除錆・中和処理、脱イオン水による純水リンス、温風乾燥、低圧精密除塵、厳格な湿度管理、包括的な絶縁性能試験を実施 |
| 復旧期間 | プロジェクト期間:計43週間(先行2基:2026年5月再稼働、3基目:2026年8月整備完了・9月全面送電再開) |
| 復旧成果 | 発電機3基の発電・稼働能力を100%回復。設備更新に伴う数年規模の操業停止および莫大な設備損失を回避 |
| 施工体制 | BELFOR緊急対応チーム、機器メーカー各社、現地技術パートナー、お客様による共同連携プロジェクト |


2. 被害の状況と直面した技術的課題
(1)複数フロア冠水と重要設備の完全水没
2025年9月下旬、ラオスを襲った大型台風により河川が決壊・氾濫し、水力発電所の建屋内に濁水が流入。発電室を含む複数フロアが冠水し、発電所の心臓部である主力大型発電機3基をはじめ、配電盤、バスダクト、基礎ピットに至るまでが泥水に没しました。
(2)「淡水浸水」特有の深刻な残留リスク
今回の浸水は海水ではなく河川等の「淡水」によるものでしたが、水力発電所特有の極めて微細なシルト(土砂・沈泥)、流域の有機物、さらには建屋内で混入した油分が濁水とともに電気設備の奥深くまで侵入しました。
- ステーター(固定子)の絶縁部吸湿: 絶縁材料が水分および不純物を吸収し、絶縁抵抗値が著しく低下。
- 狭小・アクセス困難な部位の汚染: 換気ダクト内部や巻線端部(コイルエンド)など、通常の手作業では清掃できない箇所にシルトや油分が滞留。
- 二次被害のリスク: 残留した油分や不純物を放置すると金属表面の腐食が進行し、通電時にトラッキング現象や大規模な絶縁破壊を引き起こす致命的な状態となっていました。
(3)「全損・設備交換」がもたらす天文学的損失
大型水力発電設備は完全オーダーメイド設計であり、メーカーに新規発注して再製作・納入・据付を行う場合、莫大な設備費用に加え、納入まで年単位(数年)の歳月を要します。近隣諸国へも送電を行う重要インフラにとって、年単位の操業停止は天文学的な売電損失および社会インフラ麻痺を意味し、「既存設備を洗浄・修復して早期に再稼働させる(サルベージ復旧)」ことが唯一の現実解でした。
3. リカバリープロ/BELFORによる復旧ソリューション・施工プロセス
要請を受けたBELFOR(タイ)の緊急対応チームが2025年10月に現地入りし、詳細な被害診断と汚染度の科学的サンプリングを実施。11月17日より本格的な精密除染・修復工事を開始しました。
① ローター(回転子)の分解・精密除染工程
大型ローターから磁極(ポール)を個別に分解・取り外し、1極ごとに以下の高度な化学洗浄・乾燥プロセスを適用しました。
- 脱脂・洗浄: 表面および隙間に付着した油分・シルトを専用除染剤で分解・除去。
- 除錆・中和処理: 浸水に伴い発生した金属腐食(サビ)を化学的に除去し、中和剤で安定化。
- 脱イオン水(純水)によるすすぎ: 洗浄剤成分やミネラル分を完全に洗い流すため、導電率を極限まで下げた脱イオン水を用いて高精度リンスを実施。
- 温風除湿乾燥: 専用の温風発生機と大型除湿機を組み合わせ、芯部まで均一に水分を蒸発・乾燥。
② ステーター(固定子)の高度精密除染
巨大かつ移動不可能なステーターに対しては、現地での高度な特殊洗浄を実施しました。
- 狭小部位への低圧精密洗浄: 絶縁導体、スロット(溝)、換気ダクト、巻線端部など、残留リスクの高い狭小箇所に対し、絶縁被膜を傷めない低圧精密洗浄と熟練技術者による手作業での高度除染を併用。
- 環境管理下での脱イオン水リンスと除湿乾燥: 微細なシルト粒子を純水で完全に洗い流した後、ブースを構築して厳格な温湿度管理下で温風除湿乾燥を徹底。
③ 隔離相母線(IPB/バスダクト)および付帯設備の再生
発電機本体だけでなく、発電された大電力を送る重要経路も徹底復旧しました。
- 隔離相母線(バスダクト): 内部に侵入した泥水・異物を除去するため解体点検を実施。導体表面の除染と絶縁ガイシの精密清掃・乾燥を施工。
- 高低圧受配電ケーブル・制御盤: 盤内の電子基板・リレー・遮断器を精密洗浄・乾燥し、ケーブル類の絶縁抵抗測定を実施。
- 建屋・ピット環境除染: 発電室建屋の壁面、基礎ピット内部に堆積した泥・有機物を完全に除去・除染し、再稼働後の再汚染リスクを遮断。


4. 復旧成果と定量実績(Before / After)
BELFORのグローバルな動員力と専門機材、そして機器メーカー各社・現地エンジニアとの緊密な連携により、水没した3基すべての発電機および付帯機器の完全復旧に成功しました。
- 2026年5月: 主力大型発電機2基の精密除染・乾燥・組立・絶縁試験を完了し、完全再稼働。
- 2026年8月: 3基目の除染・整備・最終試験を完了。
- 2026年9月: 発電所全体での送電を全面再開。
【主要な復旧成果】
- 発電機ユニット完全復旧: 3基(全損判定を回避)
- プロジェクト期間: 43週間(年単位を要する交換納期から大幅短縮)
- 稼働能力回復率: 100%回復(浸水由来の絶縁不良リスクを完全に排除)
5. お客様の声
「献身的な姿勢、高いプロ意識、そして卓越した技術力で支えてくれたBELFORチームに深く感謝します。当初2週間の計画でスタートした支援でしたが、チームの確実な施工品質と信頼性の高さから、最終的に43週間にわたり復旧プロジェクトの中核を担っていただきました。皆様の尽力なしには、この困難な再稼働を成し遂げることはできませんでした。」
―― 水力発電所 電気主任技術責任者(Senior Electrical Engineer)
6. よくあるご質問(FAQ:水害時の大型電気設備復旧について)
Q1. 水没した大型発電機や受配電設備は、本当に買い替えずに洗浄で直るのですか?
A. 適切な初動と専門工法(化学洗浄・脱イオン水リンス・温風除湿乾燥)を行えば、絶縁性能を回復させ再稼働させることが十分可能です。
泥水には導電性物質や腐食性シルトが含まれているため、単なる水拭きや自然乾燥では絶縁破壊を引き起こします。不純物を科学的に分解・除去し、純水ですすぎ切った上で厳格な湿度管理乾燥を行うことで、メーカーの絶縁基準値をクリアできます。
Q2. 設備を交換する場合と比べて、どのくらいの期間・コストを圧縮できますか?
A. 納期は数分の一、コストは数千万円〜数億円単位で削減できるケースが多数を占めます。
特に大型発電機や特高受変電設備は受注生産のため、新品の納入まで1〜3年を要することが珍しくありません。復旧工法を採用することで、数週間〜数ヶ月単位で操業を再開でき、工期短縮に伴う売電損失・操業停止損失の最小化に直結します。
Q3. 海外のプラントや日本国内の発電所・大規模工場でも対応可能ですか?
A. リカバリープロおよびBELFORの世界ネットワークにより、日本国内はもちろん、アジア太平洋地域・世界各国の現場へ迅速に出動可能です。
国内外の保険会社、鑑定人、機械設備メーカーと連携し、被災現場への初動調査から本格施工、最終検査までワンストップでサポートします。


